2019年02月03日

補聴器を使う前に(3)

補聴器が周波数ごとに何dBを増幅するかを示す目安に音響利得周波数レスポンスがあります。今、難聴者に対して会話音60dBSPLの1kHzが35dBHLで聞こえるように調整した補聴器があり、60dBSPLの音を入力した場合の周波数レスポンスが下図となります。縦軸の60dBからの伸びしろが増幅した音(利得)になります。これは補聴器の特性測定の検査となります。
オージオグラムのコピー5.006.jpeg

この時、オージオグラムに周波数ごとの利得を示し分かりやすく表したのが下図となり、1kHzで35dBHLに達しているかすぐにわかります。
オージオグラムのコピー5.007.jpeg

会話の理解には閾値上30dBまでの聞こえるように調整するので、会話音より30dB大きい90dBSPL入力時の周波数レスポンスが、聞こえの上限を意味することになります。これ以上に音を増幅しないとも言えます。これを最大出力音圧レベルと呼び、下図がその一例となります。
オージオグラムのコピー5.003.jpeg

この時、オージオグラムに周波数ごとの最大出力音圧レベルを示すと、閾値との間に30dB以上の幅があるかがすぐにわかります。ここで少し補正が必要となります。オージオグラムの0dBHLに対応する検査器の受話器の出力を、ヒトの耳に近似させた容器(カプラ)で測定した音圧(dBSPL)が下の表のようになります。周波数ごとに異なるカプラ内音圧を最大出力音圧レベルから引いて補正されたのが下図となります。
オージオグラムのコピー5.004.jpeg

オージオグラムのコピー5.005.jpeg

補聴器使用者に最も多い訴えは、会話が理解できないというものです。これは不十分なレベルまでしか音の増幅がなされていないからで、最大出力音圧レベルを閾値上30dB以上に維持することはとても大切なことなのです。
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2019年01月31日

霞ヶ関

先日、東京・霞が関ビルで開催された耳鼻咽喉科領域の福祉医療全国会議に宮城県担当者として本年も出席しました。そこで、厚労省保険局長の樽見英樹氏による日本の社会保障改革に関する講演を聴く機会がありました。特に現在開催されている通常国会で提出予定の法案に新しいアイデアが盛り込まれていました。
まず前提として2025年までに団塊世代が後期高齢者に到達し、高齢者の急増とそれと反対に生産年齢人口(15〜64歳)が急減するという社会が迫ってきています。国民的な議論の下でこれまで進めてきた給付と負担の見直しにより社会保障全体の持続を図り、この重大局面に対応した政策課題を踏まえた総合的改革が絶対的に必要です。さて法案である「保険医療制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)」の要点です。
1.オンライン資格確認の導入
 現在保険証番号は家族で同じですが、これを個人単位化し保険者である支払基金・国保のマイナンバーとリンクします。医療機関の窓口で保険証が使用可能かすぐに判明し、後からの照会などの作業が不要となります。これ医療機関のメリットですが、マイナンバーカードに決済機能をつけて保険証を持ち歩く必要がなくすことも検討していて、患者さんの受付・会計手続きが簡略化されることになります。
2.オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金の創設
 上記の改革を推進するために純粋に消費税財源の基金として300億円を拠出します。
3.NDB(医療保険レセプト情報等のデータベース)、介護DB(介護保険レセプト情報のデータベース)の連結解析等
 NDBと介護DBの連結解析を可能とする。現在でも名前を暗号化(匿名化)した9年分の全てのデータを国は保持しています。これらのデータベースを公益目的で研究機関に提供する規定の整備を行います。例えば、レセプト情報の分析から新薬開発に必要な情報提供が可能となります。
4.高齢者の保険事業と介護予防の一体的な実施等
 75歳以上の高齢者に対する保険事業を市町村が介護保険の地域支援事業と一体的に実施できるように、同一人の医療・健診・介護情報を一括管理します。
5.被扶養者等の要件の見直し、国民健康保険の資格管理の適正化
 近年外国人の保険診療が問題となっています。日本で就労中の外国人の家族が実際には母国に居住していても、家族として医療給付するのは不合理という考え方から、例外を設けつつも家族も国内居住を原則とします。

他にもありますが、以上が改正の概要となります。今回識者から注目されているところは、医療費自己負担について全く手を加えず現状維持にしたことで、いつも論争の的になっていたテーマでしたので過去に前例がないそうです。

講演の最後の方で、健康寿命の延伸により高齢者の多様な就労・社会参画を促進し、社会全体の活力維持を目指すと述べていました。その実現には見ること、聞くこと、触れてわかること、つまり感覚器医療の充実が必要条件であることを強調して結びとしていました。樽見氏は広範囲で難しい内容を時間内に圧縮してまとめていました。講演のスライドは首相官邸で閣僚説明用に使用されたものも含まれています。閣僚用は時間の関係で10枚程に収めるよう制限されているので、文字は細かくグラフはギッシリ、勢い早口の説明となり、真剣に聴いていてもドンドン置いていかれる感じでした。樽見氏自身は人間味があり熱心な官僚なのですが…。思うのは閣僚の方々の感覚器の健康が良好かつ注意力が高い状態で、樽見氏の法案説明が大脳にインプットされているかどうかですね。

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2019年01月21日

2019スギ花粉の飛散動向

今年もスギ花粉症の季節がやってきます。スギ花粉の飛散数や飛散開始日などが気になる頃と思います。昨年の仙台市のスギ花粉は1983年の東北大学の定点観測が始まって以来、最大の10,544個もの超大量飛散でした。1日で1昨年の総飛散数に匹敵する花粉が飛んだ日もあり、市内の耳鼻咽喉科は一時パンク状態に至りました。今年はそのような飛散数ではありませんが、花芽の着花状況や作夏の気象条件を考慮する5,000個以上の大量飛散になる可能性が高く、全く油断はできません。宮城のスギ林は、成熟期に到達して毎年多くの花芽が着花するように変化してきています。また、暖冬のため飛散開始日は例年より早く2月中旬頃になるかもしれません。今年も早めに薬剤を確保し、花粉情報のキャッチとセルフケアに努めて4月までのスギ花粉シーズンを乗り切りましょう。
写真は泉区大沢にあるホームセンタームサシ裏手のスギ林です。赤茶色に見えるくらい花芽の生育が進んでいます。
2019スギ林2.jpg

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