2017年08月20日

耳掃除していますか?

 少し前に耳掃除は決してしないほうが良いという意見がネット上で見られました。詳細については知りませんが、一律に禁じるようなものであればこれは考えものだと思います。
 耳垢について少し話してみましょう。耳の穴は外耳道と呼ばれ、耳介と同じ皮下が軟骨で支持されている軟骨部外耳道とその奥で骨で支持される骨部外耳道に分けられます。軟骨部外耳道の皮膚はお肌と同じ構造であり、上皮の脱落や皮脂腺から分泌物などがあり、たまると耳垢となります。健康な人では耳垢は奥から外へ自然に排出されるmigrationの機能があるとされています。しかし、耳垢の性状、外耳道の形態、衛生状況などは個人差が大きく、何もしなければ耳垢はたまっていくとみて良いでしょう。
 実際、日々の診療で耳垢を全く気にしない方が来院されると鼓膜所見が取れないので、まず耳垢摘出から始めないと検査もできません。また、聞こえるから良いと耳垢を放置していた結果、実は外耳道真珠腫だったという場合もあります。耳掃除の適正な頻度にはっきりしたものはありませんが、たまって聞こえにくいという自覚があれば除去すべきと思います。一方、少しでも耳垢がたまると気になり、毎日のように耳掃除する方がいます。外耳道の皮膚に機械的刺激を与え続けると、上皮がどんどん脱落して皮膚が薄くなり、感染を起こしやすくなります。特に痒みを生じるとますます気になりいじってしまうという悪循環に陥ります。
 下の写真は、耳掃除に熱中するあまりブラシ状耳かきの先端を外耳道皮膚にさして折損し、さらに異物として外耳道に残ってしまったケースです。患者さんは成人女性であり、柄の部分を持参して受診してきましたので状況はすぐにわかりました。しかし、外耳道異物としてはかなり異様で痛々しいものでありました。このようなこともありますので、耳垢がたまったと思ったら耳掃除をしても良いですが、ただしやり過ぎないようにご注意お願いします。
耳かき異物トリミング.JPG

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2017年08月17日

スギ花粉症の舌下免疫療法の効果

 2014年にスギ花粉症の舌下免疫療法(SLIT)が保険適用になり約3年が経過しました。この3年間でSLITの効果や心配された副反応のデータが集積され、中間報告的な評価が出てます。
 現在、全国で6万人程の患者さんがこの治療を受けているとされていますが、治療開始して最初の花粉症シーズンにすでに症状を抑制し、QOLも改善させ、併用薬の使用が減ったことが報告されています。実際当院でSLIT実施中の患者さんもシーズン中の発症が抑制され、抗アレルギー薬を併用せずにシーズンを乗り切った方が半数います。患者さんの満足度は、それまでご自身が受けてきた様々な薬物療法に比べて総じて高いという印象です。効果を実感されるためか、アドヒアランス(正しい服薬を維持すること)も良く、SLITの目標とする3〜5年という長い治療期間を順調にクリアできるのではないかと予測してます。
 さて、副反応に関してはどうでしょう。同じ免疫療法である皮下免疫療法(SCIT)では100万回の注射で1回の重篤な全身反応が出るとされていますが、SLITでは1億回の投与で1回のアナフィラキシーの報告がある程度です。今のところ、最初の1ヶ月間は口腔内の腫脹や錯感覚など軽微な副反応は比較的高頻度で見られるようです。重大な副反応として、すでにアナフィラキシー2例が報告されていますが、そのうち1例はSLITが原因であるかはっきりしません。薬物治療の安全性としては他の抗アレルギー薬と大差ないと考えてよいでしょう。
 経済的負担については3〜5年の治療期間は費用がかかりますが、アレルギーの薬物療法をずっと継続することを考えれば長期的には効率は良いでしょう。ただし、課題もあります。効果がある方は1年目から症状を抑制しますが、そうでない方は2〜3年経っても効果が上がらない傾向にあります。つまり誰にでも有効という訳ではないようです。また、治療終了後に効果がどの位持続するか未知の部分があります。そして、免疫反応が鈍るためか、高齢者には期待された効果が出にくいようです。市販前の治験でも65歳未満を対象としていました。
 追加です。SILTはダニのアレルギー性鼻炎の治療薬も市販され、もちろん保険適応があります。小児ではダニへの感作が早く、小さな子供が抗アレルギー薬を服薬し続けるケースが多いのが現状です。残念ながらSLITの適応は12歳以上なのですが、長年子供さんのダニアレルギーで病院通いを経験された保護者の方は、中学生頃からSLITで治療を試みることを検討されると良いでしょう。SLITは重症の気管支喘息のある方には使用できませんが、中等症以下の方では下気道の症状を安定化する効果もあるようです。
posted by ナカバヤシジビカ at 20:17| Comment(0) | 新着情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする