2021年06月26日

少し嚥下しにくい場合に

 高齢になると「飲み込みにくい」「ムセやすい」などの症状を自覚する方が出てきます。軽い症状の方が自分でできる対策にはどんなものがあるでしょう。聖隷佐倉市民病院の津田豪太先生より嚥下障害の診断と対応について講演を聞く機会がありました。軽症例の嚥下障害と思われる患者さんには、問診のポイントがあります。ムセの症状は最初に水で起こります。水は無味で体温に近くサラサラと通過しやすいからです。食事中のムセの起こる時間帯として、食事開始の時点で起こる場合は、身体の準備不足と考えられ、嚥下体操を勧めます。食事途中なら、一口量調整、休憩で対応し、食事後半なら、疲労を考え食事内容の変更、分割食で対応します。
 簡単なスクリーニング検査があります。反復唾液のみテストは30秒間に何回空嚥下できるか見るもので、5回以上が正常です。他に3mlの冷水を飲みムセないかみる方法もあります。3mlの理由は梨状窩の容積に等しく嚥下時に気管内にあふれにくいからです。梨状窩とはノドにある食塊が食道に落ちる前に一時貯まるポケットのようなくぼみです。発音で嚥下の評価をする方法もあります。パ(口唇音)、タ(舌先音)、カ(奥舌音)をうまく発音できない場合は唇の閉鎖、ノドの挙上、口内の保持に問題がありそうです。
 次に食物の食べやすさです。豆腐の味噌汁など複数素材はムセやすく均一な食材がおすすめです。麺類は5センチに切り揃えるとムセにくいです。わかめや海苔は口蓋に張りつきやすく、キザミ食は口内でバラバラになり嚥下しにくいです。トロミ液体は使用量によりドレッシング様〜ソース様〜マヨネーズ様〜マッシュポテト様と段階がつけられるので、上手に利用しましょう。嚥下障害はフレイルと関連があります。フレイルの診断基準には病院で行う専用のチェックリストがありますが、筋力低下と歩行速度について簡単に自分で判断することができます。ペットボトルの蓋を手で開けられる、横断歩道を渡る時に、先頭で信号待ちをしていて信号が青の間に渡り切れる、これが出来ていれば大丈夫でしょう。
 食事の前の準備運動として嚥下体操http://www.hriha.jp/section/swallowing/gymnastics/があります。
 A深呼吸を数回:腹式呼吸で鼻から吸って口から吐く、B首を回す、C首を左右に倒す、D肩を上げ下げする、E両手を上げ軽く背伸びをする、F頬を膨らませたりすぼませたりする、G舌先で左右の口角を触れる、H強く息を吸って止めて三つ数える、I「パパパ、ラララ、カカカ」とゆっくり言う、J深呼吸(Aと同じ)
 食事環境の整備も大切です、次のような要点があります。1口腔ケアの確認、2食に集中する(T V消し、会話控えめ)、3安定した姿勢、4使い慣れた食器や箸の使用、5食事を楽しめるペース、6食器全てを視野に入れる、7食後の姿勢保持 
 嚥下性肺炎はとても危険なので高齢者やその家族は中等症以上の嚥下障害には注意を払うと思います。普通食を何とか食べられる軽症例の方は、このような対策をとり食事を楽しみましょう。
posted by ナカバヤシジビカ at 07:19| Comment(0) | 新着情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月08日

耳に良くない生活習慣


私たちの暮らしの中にある音の大きさはどんなでしょう?

「音圧と環境音」
>130dB:飛行機の離陸時
80~90dB:パチンコ店内、工場のボイラー、
      ゲームセンター内
~80dB:飛行機の機内、地下鉄の車内、
     主要幹線道路(昼間)、蝉の声
~70dB:バスの車内、新幹線の車内、ファミレス店内
~60dB:銀行・役所の窓口、本屋店内、博物館内
~50dB:高層住宅(昼間)、戸建住宅(昼間)、
     美術館内、図書館内
~40dB:高層住宅(夜間)、戸建住宅(夜間)
約30dB:ホテル室内

音に囲まれた中で私たちはどんな感覚を持つでしょう?

「音圧と人の感覚」
>130dB:耳の疼痛感、耳を覆いたくなる
80~90dB:目的の人と話ができない
~80dB:よほど大きくしないと話せない
~70dB:意図的に声を大きくして話す
~60dB:うるさい気もするが会話ができる
~50dB:ザワザワして落ち着かない気分
~40dB:静かであるが音からの開放感がない
30dB:静かで落ち着いている
<20dB:シーンとしている

音の大きさによる私たちの身体への影響は?

「騒音の身体への影響」
30-65dB :心理的影響「やかましい」「イライラする」
65-85dB :心理的影響、生理的機能に及ぼす影響→
      疲労の増大、自律神経障害、睡眠障害
      心血管系障害 など 
85-120dB:心理的影響、生理的影響、内耳障害
120dB〜:高度内耳障害


 大きな音にさらされることにより難聴になることはよく知られています。職場での機械音、工事音などに長年さらされ発症する難聴を騒音性難聴と呼び、ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聴き続けることにより発症する難聴を音響外傷(音響性難聴)と呼びます。音響外傷にはコンサートライブの強大音、爆発音にさらされて急激に発症する場合もあります。内耳の音受容機構であるコルチ器には有毛細胞があり、空気中の音の振動に聴毛が揺れて反応することにより、電気信号を発生させ、神経を介して脳へ音情報を伝えます。コルチ器をピアノの鍵盤とみなすと、内耳の蝸牛内に低い音から高い音まで約3,500の鍵盤が50〜20,000Hzの周波数の音を細かく正確にとらえています。

 マウスを使った実験では、94dB以上の音にさらされると有毛細胞がダメージを受けます。120dB以上では短時間で有毛細胞が壊れます。有毛細胞が消失すると神経との接続が断たれ、神経自体も構造を失います。有毛細胞は再生しないので、失われた聴力はもう元には戻らないです。近年、携帯型音楽プレイヤーやスマホからイヤホンで音を聞くことが当たり前になり、それだけ音響外傷のリスクが高まっています。WHOでは、世界で11億人もの若年者(12〜35歳)が音響外傷の危険にあると報告され、さらに最近の研究では若いマウスに音響外傷が起きやすいことがわかり、将来的に心配な社会現象です。音響外傷の予防として、以下の対策が推奨されています。

1) 音量を下げ、休憩を挟んで連続して聞かない
2) 1日1時間程度の使用に制限する
3) ノイズキャンセリング機能の付いたヘッドホン、
   イヤホンを選ぶ
posted by ナカバヤシジビカ at 10:38| Comment(0) | 新着情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする