2020年09月14日

耳のあたりが痛いのはなぜ?

鼓膜や外耳が正常なのに耳と周囲に痛みを感じる患者さんがいます。これは痛覚過敏を生じているかも知れません。痛覚過敏とは刺激により局所の痛みが増悪する状態で耳掃除などが原因になることもあります。身体の皮膚、筋肉、骨組織、腹膜・胸膜、内臓、神経系など至る所に痛みのセンサー(傷害受容器)が数多く存在し、組織が損傷されるとセンサーがシグナルを発して痛みが出現します。一度興奮したセンサーは、その後もシグナルが出続けている状態(末梢性感作)となり、「ズキズキ」「チクチク」と痛むわけです。このような痛覚過敏(急性疼痛)に対して非ステロイド性消炎鎮痛薬とアセトアミノフェン(カロナール)を用いますが、疼痛には身体に生じた異常を警告する側面があり、原疾患の診断・治療も同時に求められます。

耳に痛みを起こす疾患として帯状疱疹があります。これは帯状疱疹ウイルスが神経に炎症を起こすものですが、耳の症状で気づかれることが多いです。耳に疼痛と赤い皮疹が出現すれば、まず耳性帯状疱疹を疑います。中には疼痛が先行し皮膚症状がないこともありますが、ウイルスが神経から皮膚に到達していないと考えられ、後から皮疹が出現しないか見ておく必要があります。特に顔面神経麻痺と内耳神経症状(難聴、めまい、耳鳴)を併発するハント症候群では早期に適切な治療を要しますが、症状がない段階での診断は必ずしも容易ではありません。このことから帯状疱疹に用いる抗ウイルス薬は診断疑いの時点で使用可能となっていて、当院でも怪しいときは投与に踏み切ります。ただしこの薬には腎機能低下などの副作用があり、腎疾患のある方、高齢者の投与には注意が必要です。

帯状疱疹には急性期の傷害受容性疼痛と亜急性期以降の神経障害性疼痛があります。傷害受容性疼痛では前述のように痛みのシグナルを組織から末梢神経(1次ニューロン)に送るのですが、末梢神経上でも傷害が起こると組織の炎症が収まっても神経から痛みのシグナルが発生するようになります。そのうちにシグナルを仲介する脊髄神経(2次ニューロン)側にも変化が生じ、シグナルへの反応性が増大(中枢性感作)し、次第に疼痛が治りにくくなります。これが神経障害性疼痛の仕組みであり、帯状疱疹後神経痛が該当します。この悩ましい疼痛に対して、近年プレガバリン(リリカ)が市販され広く使われるようになりました。しかし、疼痛管理がうまくいかずペインクリニックで神経ブロック、オピオイドや抗うつ薬などの服用など専門的な治療が必要になる患者さんもいます。
posted by ナカバヤシジビカ at 07:13| Comment(0) | 新着情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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