2020年02月23日

スギ花粉症 on the TV

 今年は新型肺炎出現の影響で、例年の花粉症とは異なる展開を迎えています。それは、花粉から身を守るマスクが手に入りにくいという状況です。メディアから、この問題に対する耳鼻咽喉科医としての回答を求められ、取材に応じています。2/25(火)の「NHK てれまさむねPM6:10〜7:00」でインタビューにお答えするスタイルでオンエアされる予定です。今年の花粉の動向と個人で出来る対策などを解説します。そして、2/27(木)には「仙台放送 it!PM4:50〜7:00」で花粉症の新しい治療薬についても触れた内容でオンエアの予定です。専門でないことまでに言及せざる得なかった内容もあり心苦しいのですが、参考までにということでよろしくお願いします。
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2020年02月02日

車の運転とスギ花粉症

 間もなく本格的なスギ花粉症のシーズンを迎えます。車を運転中にクシャミを我慢できなくなったとします。そこでクシャミをして一秒目をつぶった間に50km走行の車は13.8mも進んでしまいます。これで何も起こらないと良いのですが、何か起きてしまっては大変です。

 先日、薬学共用試験センターの木津純子先生の運転と薬剤のお話を聞く機会がありました。スギ花粉症に対して抗ヒスタミン薬で症状を抑えるのですが、この薬剤には眠気を起こす副作用があります。職業ドライバーを対象にした2010年の調査によれば、抗ヒスタミン薬で92.9%のドライバーが眠気や集中力・判断力の低下を自覚しています。現在国内で使用されている第2世代抗ヒスタミン薬は13種類あります。インターネット調査では、各種類において軽いレベルの眠気がほとんどですが、耐え難い眠気が出現する頻度が1〜7%あることが報告されています。抗ヒスタミン薬は大変歴史の古い薬剤で、元々は中枢抑制作用を利用した抗精神病薬・抗不安薬として使用されてきました。これが第1世代に分類され、作用機序としては血液脳関門というバリアを超えて脳内に鎮静作用をもたらすのです。この脳内への移行を抑えてアレルギー症状にだけ効くように改良されたのが第2世代であり、花粉症治療薬として最も多く使われています。

 抗ヒスタミン薬の自動車運転に及ぼす影響を直接的に実験したオランダの研究があります。方法は100kmの走行区間を90~95kmで走行させて、基準となる中心ラインから逸脱する頻度を伴走車が測定するものです。その結果、第1世代抗ヒスタミン薬は5種類全て「運転に影響あり」の判定でしたが、第2世代の5種類は全て「運転への影響は少ない」と結論づけられています。眠気と共に注目される副作用はインペアード・パフォーマンスです。これは知らず知らず集中力や作業効率が低下するもので、眠気と異なり自覚がない点が恐いところです。

 このような事情から、現在では薬剤添付文書に自動車運転に対して禁止、注意、記載なしの三段階の分類がなされ、抗ヒスタミン薬に限らず、全ての薬剤で注意喚起が義務付けられています。運転禁止薬剤には、第1世代抗ヒスタミン薬ばかりではなくパーキンソン病治療薬、片頭痛治療薬、禁煙補助薬なども入っています。運転注意の薬剤は数多くありますが、問題なのは注意薬剤同士の併用により眠気が強く出てしまうことです。従って、処方には相互作用によるリスクを下げる特別の注意が必要です。また「記載なし」の薬剤でも薬剤感受性には個人差があるのでフリーパスとはならないです。では、どんな抗ヒスタミン薬が理想なのでしょうか。それは1)即効性と持続性があり、2)眠気を起こさず、作業効率に影響せず、3)長期連用が可能であり、4)1日1〜2回の服用で良い、とまとめられています。ここに患者さんの治療歴を加味してベストの薬剤選択を行うことになります。

 スギ花粉症の初期療法はとても効率の良い治療法です。最近の研究では、アレルゲンが体内に取り込まれる前に抗ヒスタミン薬を服薬すると、鼻粘膜の腺細胞、血管、神経上に存在するヒスタミンの結合相手であるH1受容体の発現を抑えることが分かってきました。つまり、H1受容体に対する拮抗薬としてだけではなく、逆作動薬として細胞のヒスタミン感受性を低下させ、鼻水、鼻づまり、くしゃみの症状を抑え込んでいるのです。今年は花粉飛散量が少ないと予想されていますが、治療を怠るとシーズン末期に重症化することも考えられるので、いつも通り本格飛散前からの服用がおすすめです。
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2020年01月24日

小児急性中耳炎の up to date

 私たち耳鼻咽喉科医が毎日診ている子どもの急性中耳炎には治療ガイドラインがあります。臨床症状や鼓膜所見のスコアリングによる重症度判定を行い、治療アルゴリズムに応じた処置・薬剤選択を行なうことが基本となっています。近年、肺炎球菌ワクチンの普及や有効な抗菌薬の登場により難治性急性中耳炎は減ってきた印象がありますが、治療困難例が無くなったわけではありません。

 急性中耳炎の難治化には、遷延化(再燃)と反復化(再発)があります。遷延化は抗菌薬で改善しても薬を止めると症状が出てくる場合で、反復化は一度治るのですが再発を繰り返す場合を指します。難治化にはインフルエンザ菌が原因となることが多いです。二つに分けて分析すると、遷延化ではその耐性菌であるBLNARの割合が高くなるので、抗菌薬はBLNARに有効な薬剤を選択します。反復化では迷わずBLNARをターゲットにした強い薬剤を用い同時に鼓膜切開を施行します。臨床では反復化は少数で遷延化が多くを占めます。難治化の原因には初回治療で充分量の抗菌薬が使用されず、結果として薬剤耐性化を許してしまったことが考えられます。周知のように抗菌薬は耐性菌の出現と絶えず競争しているのですが、最近ではBLPACRというアモキシシリン(PC系抗菌薬)とクラブラン酸(PCの効果を高める物質)の両方に抵抗性の耐性菌が増加しつつあります。現在のような抗菌薬の開発が頭打ちの状況では、今ある戦力で将来の耐性菌の出現に対応できるのか大いに不安であり、今後の治療に危機感が持たれています。

 薬剤耐性の問題には子どもの特性や社会・生活環境が影響していることが指摘されています。一つは免疫能の問題です。生直後は母体からの移行抗体による受動免疫で感染に対する抵抗性が強いですが、生後数ヶ月から2・3歳までは受動免疫が減衰するのに能動免疫が未熟であるため、感染しやすい状態です。この弱い時期は急性中耳炎の好発年齢であるので、お母さん達から「中耳炎はクセになるのですか?」「このまま中耳炎が治らないことがありますか?」という質問が時々出ます。しかし実際には少なくとも4歳になれば明るい未来が待っているので、中耳炎との付き合いは「焦らず根気よく」がコツです。

 もう一つの問題は、集団保育です。日本では共働きが標準的な就労形態となり、保育所等を利用する児童は増加する一方です。厚労省発表の保育所等利用率の推移をみると、1・2歳児の利用率はH24に33.0%だったのがH31には48.1%に急上昇しています。H31の時点で3歳未満の保育児童が110万人もいます。平均月齢19ヶ月、57名の反復性中耳炎の小児の保育状況を調べた伊藤真人先生(自治医大小児耳鼻咽喉科教授)の調査によれば、患児の75%が保育園児で25%が家庭保育児でした。家庭保育児でも兄弟が保育園に通園している場合がほとんどであり、96.5%の患児が保育園と関わりがありました。特に0〜2歳児のクラスの過密状態は、病原菌の暴露の観点から問題であり、集団保育自体がハイリスクファクターと考えられています。

 以上からまとめると、小児急性中耳炎に対してはリスクファクターを念頭に置いた治療方針を策定し難治化を防止することが、子どもと親への負担を減らす良策といえます。


posted by ナカバヤシジビカ at 07:09| Comment(0) | 新着情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする