2021年03月05日

重症のスギ花粉症の方へ

 コロナ禍のさなか、今年もスギ花粉症のシーズンがやって来ました。今までの薬剤で効果が十分でない、または人前で症状が出てしまうのを避けたいとうい方には、昨年から保険適応となった抗体製剤(ゾレア)という選択肢があります。ゾレアはアレルギーを起こす血液中のIgE抗体に結合することにより、炎症細胞の活性化を抑制します。12歳以上の重症のスギ花粉症の方が対象で、2〜4週毎に皮下注射を行います。昨年の経験では注射後2日目位から効果が現れはじめ、即効性があり効果の持続性も確認されました。スギ花粉症には第2世代抗ヒスタミン薬による初期療法で先手を打つことが推奨されていますが、もうそのタイミングは過ぎました。ゾレアは発症後の患者さんでも血液中のIgE値を下げて症状を抑制するので、シーズン中からの治療開始でも遅くありません。治療期間は5月までで期限がありますが、スギのあとに続くヒノキの対策にもなると考えられます。
 また、この薬剤は国内で11年前より同じアレルギー疾患である気管支喘息や蕁麻疹に使用され、有効性と安全性が十分検証されています。投与量は患者さんの血液中の総IgE値と体重から決定するスタイルになっているので、人により注射の本数が変わります。ところで抗体製剤は開発と生産に大きなコストがかかっているので、今までの抗アレルギー薬の窓口負担とは全く別に考えていただく必要があります。最小単位の75mgシリンジで1本4,444円(3割負担)で、本数の分だけ費用がかかります。これでも、薬価改定により昨年より40%程度安くなってはいます。
 スギ花粉症が重症で新しい試みをしたい方は、今年は抗体製剤を検討されてはどうでしょうか。
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2020年09月14日

耳のあたりが痛いのはなぜ?

鼓膜や外耳が正常なのに耳と周囲に痛みを感じる患者さんがいます。これは痛覚過敏を生じているかも知れません。痛覚過敏とは刺激により局所の痛みが増悪する状態で耳掃除などが原因になることもあります。身体の皮膚、筋肉、骨組織、腹膜・胸膜、内臓、神経系など至る所に痛みのセンサー(傷害受容器)が数多く存在し、組織が損傷されるとセンサーがシグナルを発して痛みが出現します。一度興奮したセンサーは、その後もシグナルが出続けている状態(末梢性感作)となり、「ズキズキ」「チクチク」と痛むわけです。このような痛覚過敏(急性疼痛)に対して非ステロイド性消炎鎮痛薬とアセトアミノフェン(カロナール)を用いますが、疼痛には身体に生じた異常を警告する側面があり、原疾患の診断・治療も同時に求められます。

耳に痛みを起こす疾患として帯状疱疹があります。これは帯状疱疹ウイルスが神経に炎症を起こすものですが、耳の症状で気づかれることが多いです。耳に疼痛と赤い皮疹が出現すれば、まず耳性帯状疱疹を疑います。中には疼痛が先行し皮膚症状がないこともありますが、ウイルスが神経から皮膚に到達していないと考えられ、後から皮疹が出現しないか見ておく必要があります。特に顔面神経麻痺と内耳神経症状(難聴、めまい、耳鳴)を併発するハント症候群では早期に適切な治療を要しますが、症状がない段階での診断は必ずしも容易ではありません。このことから帯状疱疹に用いる抗ウイルス薬は診断疑いの時点で使用可能となっていて、当院でも怪しいときは投与に踏み切ります。ただしこの薬には腎機能低下などの副作用があり、腎疾患のある方、高齢者の投与には注意が必要です。

帯状疱疹には急性期の傷害受容性疼痛と亜急性期以降の神経障害性疼痛があります。傷害受容性疼痛では前述のように痛みのシグナルを組織から末梢神経(1次ニューロン)に送るのですが、末梢神経上でも傷害が起こると組織の炎症が収まっても神経から痛みのシグナルが発生するようになります。そのうちにシグナルを仲介する脊髄神経(2次ニューロン)側にも変化が生じ、シグナルへの反応性が増大(中枢性感作)し、次第に疼痛が治りにくくなります。これが神経障害性疼痛の仕組みであり、帯状疱疹後神経痛が該当します。この悩ましい疼痛に対して、近年プレガバリン(リリカ)が市販され広く使われるようになりました。しかし、疼痛管理がうまくいかずペインクリニックで神経ブロック、オピオイドや抗うつ薬などの服用など専門的な治療が必要になる患者さんもいます。
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2020年08月30日

新型コロナ感染では?と思った時に

仙台市医師会が新型コロナの感染者を少ない状態に収束させるために、分かりやすく作成したダイジェストが有用なのでお知らせします。

1)次の方はコロナ感染疑いなので「かかりつけ医」か「コールセンター」へ電話相談して下さい
□発熱(37.5度以上)または呼吸器症状があり、コロナ陽性者と濃厚接触がある
□発熱(37.5度以上)かつ呼吸器症状があり、発症前14日以内にコロナ流行地に滞在もしくは流行地にいた方と濃厚接触がある
2)次の方はPCR検査が必要かどうか判断すべき段階なので、すぐに「かかりつけ医」か「コールセンター」へ電話相談して下さい
□息苦しさ、強いだるさ、高熱のいずれかがある
□重症化しやすい方で、軽いけれども発熱や咳がある
□上記以外でも、発熱や咳が長い間続いている
「重症化しやすい」とは、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPDなど)の方、透析中の方、免疫抑制剤や抗がん剤を用いている方です
耳鼻咽喉科的には嗅覚・味覚障害が単独で出現した場合でも、総合的な判断の元でPCR検査をすぐに受けて頂くことがあります

新型コロナに関する検査
1)PCR検査:鼻咽頭ぬぐい液を採取し検査するもので、確定診断として信頼されています。6月より唾液でも検査可能になっていますが、その結果についての取り扱いはまだ定まっていません。PCR検査は行政と契約した指定医療機関でしか検査できませんが(保険適応で自己負担分を公費で充当)、一部の民間検査機関でも依頼により検査を実施しています。
2)抗原検査:ウイルスを対象とした検査です。簡易な検査キットで30分程度で結果が出ることがメリットですが、PCR検査に比べて感度が低いです。現在のところ、コロナ疑いの方に抗原検査を行い、陰性だった場合に念のためPCR検査を行うという併用が検討されています。
3)抗体検査:感染後に血液中に出現する抗体を対象とした検査です。様々な検出法の抗体検査キットが市場に流通していますが、精度にばらつきがあり、法律で承認を得た検査キットさえない状態です。WHOは診断目的というよりは疫学調査に利用されるとみなしています。

濃厚接触には定義があります
●接触により感染する期間(感染可能期間)は、接触相手である患者さんが症状を呈した2日前から隔離開始までの間です。
●「患者さんと同居、長時間の接触あり」「適切な感染防御なしに患者さんを診察、看護、介護していた」「患者さんの気道分泌物、体液を直接触れた」「適切な感染防御なしに患者さんと1メートル以内、15分以上の接触あり」これらに該当すれば濃厚接触者として取り扱われます。なお適切な感染防御とは適切なマスク着用・手指消毒を基本とします。
posted by ナカバヤシジビカ at 20:35| Comment(0) | 新着情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする